美容整形物語~鼻中隔延長術

「あー、鼻ね。鼻だよね。あの子の鼻ってスゴイ特徴的だから、すぐわかるよね。」

大学の講義が始まるほんの数分前、大講義室に入る時、そんな声を聴いた。それはほんの数カ月前に知り合った、友人グループの声だった。

「そうそうー、なんていうの?極端に小さいっていうか、にんにくっていうか、そんな感じだよねー。えへへへーっ。」

「しー、聞いてたらどうすんの。そんなこと言わないほうがいいよー。ははは。」

 

確かに、友人たちの声だ。3人。私を入れて、4人。大学に入学してからはほとんど一緒に行動していた。

それは6月に入ったころ、雨の日だった…。

 

コンプレックス。

そう、私にとってこの鼻はコンプレックスでしかない。この鼻でよかったと思ったことは一度もない。

物心ついた時からそうだ。5歳か6歳か、たぶんそんなころだと思う。

他の女の子たちと同じように、セーラームーンにあこがれていた、可愛いキャラクターになりきっていた。その頃って、ほとんどの女の子が、自分はお姫様でもないし、アニメの中のかわいいキャラクターでもないって意識する時期だと思う。私もそうだ。

 

特別に鼻が低いとは思っていなかったし、親も全然、私の鼻が低いとは言っていなかったし、友達だって気にしていなかった(思う)。

小学生になって残酷な現実が待っていた。

 

男の子にいじめられた、というより、からかわれた。鼻の形のことで。その時だ、初めて自分の鼻が「異形」と思ったのは。

 

そのからかわれた記憶を引きずりながら思春期になった。その頃になると、いろいろと調べたりしたし、成長に入ったところで同級生たちと、ますますその差が明らかになっていく…。

 

現実を直視したくはなかったけど、自然と鼻に目が行った。鏡を何度も見るようになった。

 

鼻の軟骨を伸ばす…鼻中隔延長術という美容整形の方法がある、それに気が付いたのは、高校生の頃だった。費用は20万円くらい。とてもお小遣いだけで払える金額ではない。かといって進学コースに通っていた私は、アルバイトをするヒマもなく、コンプレックスを抱えながら悶々と過ごしていた。

 

受験を終え、晴れて大学生になった私。私服での通学、開放的な一人暮らしに、少しは鼻のコンプレックスも和らいでいた、と思う。大学デビューを飾った私は、友人を作り、大学生活を満喫していたーその矢先の出来事だった…

 

くやしい!

 

友人の言葉にショックを受けた私は、すぐにアルバイトを探した。

短時間で稼げる、家庭教師か塾講師を探した。

お金を貯めよう、夏までに、それで鼻中隔延長手術を受けるんだ。鼻を直したい!

気持ちは次第に強くなっていった…

 

つづく